毎日を編むブログ

かごについて調べ、考え、編んでいます。

絵画の中のかご④マネの「少年と犬」「草上の昼食」など。

前回のバロック期から約200年ほど過ぎると印象派の時代です。

いろいろな画家の方が静物画や風俗画などでいろいろなバスケットを絵の中に描いています。

その中で面白いなと思ったのはマネでした。

 

 

1861年の作品です。

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A boy with a dog, 1861 - Edouard Manet - WikiArt.org

「少年と犬」/エドゥアール・マネ(Édouard Manet 1832-1883)

 

マネの作品の中ではあまり有名でない絵です。

パッと見の印象としては、1900年代前半を描いたイタリア映画のワンシーンみたいと思いました。

(マネはフランスの人だけど。) 

カラっと明るい空だけを背景にしてバスケットを持った男の子と犬が描かれています。

このバスケットがヨーロッパらしい籐や柳のものではなくて大きさといい形といい、どこから見ても「モロッコのマルシェバッグ」です。

今、輸入されて日本で売られているものと変わりません。 

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【ディアモロッコ マルシェバッグ ナチュラル M】かごバッグDearMorocco モロッコ 

 

調べてみるとこの絵が描かれた頃、モロッコはまだフランス領になる前でヨーロッパ列強が支配権を争っていた時代です。

この時すでにアフリカの品物を仕入れるルートがあったのか、たまたま一つのお土産として持ち帰られたのかわかりません。

でもかごが産地を離れ、作られた目的である用途を離れて都会の人の手に渡るということがすでにこの頃から始まっていたのかも知れません。

 

 

比べれば、ミレーの「晩鐘」も同じ頃(1857-1859)のフランスの作品ですが、これに描かれているバスケットはいかにもヨーロッパらしいたぶん柳のもの。

世界中どこにでもあった、その土地の植物から作った、その土地の仕事に適したバスケットです。

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Jean-François Millet - Wikipedia

「晩鐘」/ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet 1814-1875)

  

ところでマネは静物画もたくさん描いていて、バスケットに盛られたフルーツの絵もいくつかありました。

既にたくさん描かれてきた、珍しくない題材ですが、それだけに画家の個性がとてもはっきり出るように思います。

マネの絵もとてもマネらしい。

何の果物を描いてるのかはっきりわからないけど葉っぱも含めてこの色使い、かごもいい感じです。 

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Basket of Fruit | Museum of Fine Arts, Boston(1864)

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File:Basket of Fruit, by Édouard Manet.JPG - Wikimedia Commons(1864)

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Ordrupgaard | Manet: Basket of Pears - Ordrupgaard(1882)

  

そしてこちらはとても有名な代表作「草上の昼食」。

ここではピクニックバスケット的なかごが描かれています。

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Le Déjeuner sur l'herbe — Wikipédia

1862年頃に描かれ、サロンに出した際には物議を醸し、その後の美術史の流れを変えたという作品。

アラーキーの写真みたいな感じだったんでしょうか。

センセーショナルな仕掛けを試みたということかも知れませんけど、謎は謎のままの退廃的なお伽噺とでもいうような感じが今でもしますね。 

脱ぎ捨てられたお洋服を見ますと、上品なブルーの木綿のふんわりした夏服だと思われます。

ストローハットと籐のバスケットをコーディネートして、上流階級の女性の夏のリゾートスタイルですよね。

ここで描かれたバスケットは「少年と犬」と違ってヨーロッパの伝統的なものですが、ピクニックみたいな「遊び」の小道具にも既になっています。

 

 

そして、同じ頃のこんな絵を見つけました。 

フランスの画家、バジールの代表作「家族の集い」(1867)です。

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フレデリック・バジール - Wikipedia

「家族の集い」/ジャン・フレデリック・バジール (Jean Frédéric Bazille 1841-1870)

裕福なバジール一家の集団肖像画です。

マネの「草上の昼食」と並べてしまうと怒られそうです。

ブルーのドレスの感じが「草上の昼食」の脱ぎ捨てられたドレスとすごく似ていると思うので。

でも本題はそこではなく、中央にいる女性の前に置かれているバスケットです。

小さめでお洒落なデザインのこのバスケットは、おそらくは果物を盛ったりするものではなく、この女性のハンドバッグとしてのバッグ、今でいうかごバッグだと思うのですが。 

19世紀といえば「パニエ・リュスティック」も流行していたそうなので、避暑地のお洒落としてかごバッグが持たれていたとしても不思議ではないですね。 

  

同じバジールの絵でこんなのもありました。

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Frédéric Bazille en reproductions imprimées ou peintes sur REPRO-TABLEAUX.COM(1867)

とても小さいですけどここでもテーブルの上にバスケットが描かれています。

これはきっとジェーン・バーキンが愛用したあの形のものですね。

夏の避暑地、ふんわりした木綿の青いドレス、日傘、そしてかごバッグです。 

フランス革命からは何十年か過ぎていて、産業革命もだいたい終わっている、ナポレオン3世の第二帝政時代。

まだまだ身分の格差もあってここで描かれているのはあくまでも上流階級ですが、ここまでくると長いバスケットの歴史も現代まであと少し、地続きという感じですね。 

 

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Jane Birkin's Wicker Basket Might Just Top Her Namesake Hermès Bag

(PHOTO)| The Huffington Post